グラフの見方

グラフは、11:00及び15:00における推定NAVと最良売買気配値との乖離率です(二本の折れ線は売気配値と買気配値に対応しています)。乖離率がプラスのときETFは割高、マイナスのときは割安です。

ETFの三種類の価格

ETFの価格には、三種類の価格があります。 詳しくは、 QUICKの解説 をごらんください。

ETFの乖離率

ETF価格の議論をする時によく登場するキーワードのひとつに乖離率があります。乖離率は様々な意味で使用されますが、投資家が一番関心があるのが、NAVと市場価格との乖離率でしょう。本Webで掲載している乖離率は以下の意味です:

乖離率に注目する理由

非上場の投資信託は通常は一日一回しか基準価額が更新されませんが、ETFについても同じことが言えます。ETFは取引所で売買できるために、一日の間に様々な値段がつきますが、それはETFの本源的な価値に基づいた価格なのか、銘柄特有の需給が強く反映されたものなかは、価格を一見しただけではよくわかりません。そこで、ETFの取引値を次の要素に分解します:

本源的価値
ETFのポートフォリオの時価を反映した価格。連動を目指すインデックス値とほぼ同じ値動きをする。
銘柄特有の需給
市場価格と上記本源的価値の価格差

NAVとは

NAV(Net Asset Value)とは、ETF受益証券1口あたりの純資産額(本源的価値)のことです。基準価額とも言います。

運用会社・取引所が公表するNAVと乖離率

NAVは通常1日1回運用会社によって公表されます。NAVを計算する元になる市場価格は、日本営業日の夕方から夜にかけて各運用会社及び投信情報サイトに当日のNAVが掲載されます。ここで発表されるNAVを算出するのに用いる金融情報がいつのものかに注意してください。

中国株ETFのNAV・乖離率の算出タイムスケジュールは以下のようになります:

予定日本時間
NAVの算出に用いる中国株の株価が決まる(終値)3/1 16:00
NAVの算出に用いる人民元−円レートが決まる3/2 10:00
ETFの終値(東証上場)※13/2 15:00
ETFの終値(大証上場)※13/2 15:10
運用会社・投信情報会社がNAV発表※23/2 夕〜夜
TDnetに適時開示が載る3/3 午前
取引所が※1と※2の乖離率発表3/3 中

大証上場の日経225連動ETFは、東証の現物取引終了後も10分間取引できます。スケジュールは以下のとおりです:
予定日本時間
NAVの算出で用いる225銘柄の株価の大半が決まる(東証終値)3/2 15:00
ETFの終値(東証上場)※13/2 15:00
ETFの終値(大証上場)※13/2 15:10
NAVの算出で用いる先物価格3/2 15:10
運用会社・投信情報会社がNAV発表※23/2 夕〜夜
TDnetに適時開示が載る3/3 午前
取引所が※1と※2の乖離率発表3/3 中

日経225連動ETFの資産には先物は数パーセント以下しか組み入れられていませんので、NAVは東証の現物株価でほとんど決まります。 一方、先物価格と日経225とETFは価格の連動性が極めて高く、先物価格とETF価格は連動していると言っても過言ではありません。 したがって、東証が穏やかなうちに取引終了した15:00以降に波乱があって、15:00の日経225と15:10の先物価格がかけ離れた値段になった場合、大証上場のETFも波乱となり15:00の価格と終値はかけ離れた値段になっているのが「正しい」と考えられます。

しかし、大証発表のPDFは、15:00の株価で算出されるNAVと15:10のETF終値を使って乖離率を算出しています。これは投資家が本当に知りたい情報ではないはずです。

取引の実態を表す乖離率とは

乖離率の算出に用いる価格とNAVの時刻を一致させないと、投資家が真に求める「正しい」乖離率は算出できないはずです。ところが、そのような情報は(リアルタイムでも事後的にも)運用会社・取引所は出していません。投信情報会社も出していないようです。

本サイトで掲載している乖離率の算出方針

本サイトに掲載する乖離率を算出するにあたり、同時刻のETF価格とNAVを用いることを原則とします。

運用会社が正式に公表したわけではないが、ある特定の時刻の金融情報に基づいてNAVを算出すると多分こうなるだろうと推定されるNAV(以後、推定NAVと呼びます)を乖離率の算出に用います。推定NAVの算出方法は後述します。

価格についても注意が必要です。出来高ゼロだったり引けに出来ないETFに対して、どの価格を適用するかが問題になります。例えば9:00に出来たきり以降の出来高がゼロのETFの乖離率を算出するとき、9:00の取引価格を使用するのでは、9:00における推定NAVを用いて乖離率を算出しなければなりません。このようなこと考え出すと情報収集の負担が大きくなってしまうので、個人的にはそこまでしたくありません。そこで、東証上場のETFについては、11:00と15:00の引けに板に残った最良売買気配値を、大証上場のETFについては、11:00の前引けと15:00のザラ場の最良売買気配値を乖離率の算出に用いることとします。

終値・取引値は原則として使用しません。その理由は二つあります。一つ目の理由は、他の投資家もその価格で取引できるとは限らないからです。二つ目の理由は、出来高がゼロであることは板が閑散としていることとイコールではないからです。大口投資家が極狭の売買スプレッドで板を支配している状況は流動性があると認識すべきですが、出来高だけに着目していると、流動性のない銘柄だと誤解してしまうことになりかねません。

乖離率算出に用いる価格は、最良売気配値と最良買気配値です。原則として、同時刻に二種類の乖離率を算出します。特別気配の場合は、一つの価格のみ用います。指値注文がない場合は、計算不能とします。

推定NAVの求め方

私は、エクセルの外部データ取り込み機能を用いて推定NAVを算出しています。 公開しているエクセルシートは、一般に公開されている金融情報に基づいて推定NAVを求める手助けをするツールです。 シートとVBAマクロはパスワードなしで閲覧・編集が可能です。

ここでは、エクセルシート内で行っているNAVの推定方法を説明します。(改善中のため、まだ説明どおりにできていないものもあります)

  1. 運用会社が公表しているNAVと、必要ならNAVに対応するインデックス値を取得します。
  2. NAVを取得したい時刻になったら、以下の表に従って金融情報を取得してNAV算出に使用します。配当・分配落ちは、可能であれば事前もしくは事後に調整します
インデックス値の取得しやすさNAVの推定方法主なインデックス・ETF名
推定NAVが公開されている円換算値を取得する。
KODEX200
iNAVが公表されている銘柄
随時取得可能トラッキングエラーなしを仮定し、インデックス騰落率とNAV騰落率は同じとする日経225, 業種別, サイズ別, 日経300, 貴金属, NYダウ(※),パンダ, 上証50, WTI、一部商品(※)
1日1回以下(ポートフォリオ価値の推定が比較的容易)ポートフォリオ騰落率とNAV騰落率は同じとするRN小型コア, MSCI-KOKUSAI(※), MSCI-EMERGING
1日1回以下(ポートフォリオ価値の推定が困難)類似の商品の騰落率または海外市場の最新値を参考にする。海外債券、一部商品
手がかりなし原則として、公式発表のNAVと同じ南ア株, ロシア株, ブラジル株

※ NYダウ、S&P500及び一部商品の先物はGLOBEXでほぼ24時間の取引が可能。

乖離率の差について

米国株を含む株価指数(S&P500, DJIA, NASDAQ100, MSCI-KOKUSAI, MSCI-ACWI ex Japan)をベンチマークとするETFについて、「SPDR S&P500 ETF(1557)」との乖離率の差をグラフにしています。乖離率に着目した裁定取引を仕掛ける際の参考になるかもしれません。